徒然なるマナーに【その2】モラルとマナー
新人研修の終了後、参加者のお一人からこんなご質問がありました。
「マナーはモラルとどう違うのでしょう?」
私からは「”モラル”は道徳。個々人の中にある倫理観です。
今回研修でも学んだビジネスマナーとしての”マナー”は、礼儀作法であり、相手への思いやりの心の表現です。」
と、お伝えしました。
しかしながら、ご質問者はどうも腑に落ちないご様子。
ぜひもっと分かり易いご回答を致したいと、「後日文書で回答すること」をお約束してその場はお別れしました。
さて、モラルは道徳と直訳できますので、広辞苑で調べてみますと以下のように出ています。
どう‐とく【道徳】‥ 人のふみ行うべき道。ある社会で、その成員の社会に対する、
あるいは成員相互間の行為の善悪を判断する基準として、一般に承認されている規範の総体。
法律のような外面的強制力を伴うものでなく、個人の内面的な原理。
一方マナーは、礼儀作法と直訳できます。「礼儀」と「作法」に分かれて、以下のように出ています。
れい‐ぎ【礼儀】‥社会生活の秩序を保つために人が守るべき行動様式。特に、敬意をあらわす作法。
さ‐ほう【作法】‥物事を行う方法。きまったやり方。きまり。しきたり。起居・動作の正しい法式。
つまり、意味からは『個人の中にある心については道徳。人との関わりについて表現するのが礼儀(マナー)』ということです。
道徳心(モラル)がベースになり、その発露(はつろ)がマナーと言えますね。
3年前から小学校の道徳教育が特別の教科として導入されています。
以前よりも強化した指導の目標として文科省は
「自己の生き方を考え、主体的な判断の下に行動し、自立した人間として他者と共によりよく生きるため」
と掲げています。
道徳は、国の文化や環境、時代背景により変化するものと考えられ、極端な例ですが、戦時下でしたら"国のために命を投げ打つ"のも道徳(当時は「修身」と言われていたようです)であったわけで、一夫多妻の文化の国では、複数の奥さんを持つことも道徳的に問題がないといえます。
では、マナーとしてはどうか。というと、全く別の観点になります。一夫多妻の国でも、ある女性(妻)は「他にも奥さんがいることは嫌」と感じていることを夫が察するならば、その心を重んじて他の妻の話をしないなど、交流に配慮するとか...。(完全に想像の世界ですが・笑)戦時下で同じ道徳心を持たない人たちとも、地域の暮らしの目標を達するために、お互いに安全を守りあうにはどうするか...。
マナーは、コミュニケーションにおける思いやりの表現。
そう、「表現」なのですから。
こうした研修参加者からの素朴な?疑問、質問には毎回学ぶところが多く有難い限りです。
参加者が何に疑問を持ち、どんなことに悩んだり躓(つまず)いているのか。
これは研修講座の柱になる大切な事柄です。